泥棒のキブン
終電よりも2本早い電車。
最寄り駅から家とは逆側に少し歩く。
この時間にやってるラーメン屋はここぐらい。
客は僕だけで、店員も終電ラッシュの前にひと休憩している。
あえて看板メニューではないエビワンタンメン。
いい意味で、可もなく不可もない。
店を出ると雨が強くなっていた。
たまにスーツ着た日に限って。
550円払うのは負けた気がするから、濡れて帰る。
たまには濡れて帰るのもいいかも。
でも、手帳が濡れるのは嫌だから、バッグの奥に移動する。
後先考える自分がダサい。
やったこともない髪のかき揚げ方。
それもまたダサい。
音が立たないように鍵を開ける。
自分の家なのに泥棒の気分。