東京は広く命は長い
東京が広くなった。
自分が大きくなるにつれて小さくなるばかりだった東京が。
頻繁に会ってた人たちが偶然同じタイミングで東京から出て行くとそれだけで東京は広くなるらしい。思わぬ発見だった。
自分を探しに遠くへ行ってしまった人には僕から連絡するべきではない。
一般的に新しい自分を見つけるには古い自分を少なからず削り落とす必要があるようで、その人たちにとっての僕は間違いなく古い自分の一部だから。
またこうやって意図的に情報を遮断することで、僕の中で神格化された人間が出来上がる。
神格化が進行すると会いたくもなくなる。僕好みに神格化したのに、ただの人間に堕ちられたら困るから。
その神々を拝む時間だけで朝から晩までを埋め尽くせたら、どんなに幸せだろうか。
時間の流れも遅くなった。僕の体感時間を決めるのは太陽ではなく周りの人間なんだということにも気付かされた。
実質的には寿命が延びたことになるかもしれない。
よく歳をとればとるほど体感時間が短くなると聞くけれど、少なくとも今の僕には当てはまらない。
“密度×時間=その人の人生の価値”だとするなら、密度が低い人ほど長生きしなきゃいけない。だから好都合だ。
今はこの逆行した感覚を大切にしよう。