生臭い映画を観て
是枝監督が撮った映画を初めて映画館で観た。
そう、今話題の万引き家族。
是枝監督の作品に繰り返し起用される樹木希林とリリー・フランキーの演技は、観客の視点を地面に括り付ける。
あの人たちが出てくると途端に物語が空想の世界に飛んでいけなくなるような。
僕が今踏んでいる床と地続きの場所で繰り広げられている話だと実感させられてしまう。
演技を通り越して、リアルを通り越して、もはや生臭いんだ。
映画館は映画の世界に没入しやすくする装置。
程度は違えどどの映画も空想の世界で、そこに入り込むことは現実から一時的にログアウトする感覚に近い。
僕はそれが楽しくてしょうがなくて、いや時には現実から目を背けたくて、映画を観ているのだと思う。
だから、映画館という半ば強制的に集中せざるを得ない環境で空想とは思えないほど現実味が強い映画を観るのが辛かったのかもしれない。
無意識的に認知の外側に追いやっているような、でも少し考えれば近くにいるに決まっているような人々をまじまじと見なくてはいけない。これがinvisible peopleか。